イリアス 第二十四歌

  • もう,アキレウスってサド??ってくらいヘクトルの遺体に酷いことしている。執念深いというか。学生時代に法哲学で「力の強いカラス同士の喧嘩は優劣がつけばすぐに終わる,殺すことはしない。が,弱い鳩同士の喧嘩では恐怖心のせいで,勝った鳩は負けた鳩が死んだあとも屍骸をずっと突つきまわして肉のかたまりになるまでやめない」って聞いたぞ。結局パワーという関係ではアキレウスの方が強かったかもしれないけれど,人間力としてはヘクトルの方が上だったってことを示してるんじゃないかとか勘繰ってしまう。
  • 初めてここで,「パリスの審判」についてちょこっとだけ触れられている。にしても,やっぱりパリスってバカ。
  • ヘルメイアスがヘクトルの遺体を引取りにギリシア陣に向かうプリアモスを先導してやる。最初は名を伏せていたが,アキレウスの部屋の手前で名を明かし,「神が特定の人間をあからさまに贔屓するところを見せるのは賢明ではない」といって,その場で姿を隠す。確かにヘルメイアスは神で人間とは違うが,ほとんどギリシアの神は性格的な欠点を持つなど人間と変わらないところも持っている。だから,神も人間も同列に扱ってしまうが,ヘルメイアスは賢いし,気配りという点でも優れている。だからこそ人助けの神に慣れたのだろうが。パリスやアプロディテに少しでもこの賢さや気配りがあれば,話は全然違っていただろうに…
  • パトロクロスが冥界から舞い戻って,なぜ自分の遺体を火葬してくれないのかとアキレウスに訴える場面があるが,この辺を読むと,パトロクロスの死以降のアキレウスの一連の行動は,パトロクロスのためではなく,アキレウス自身のためのものと受取れる。葬式は生きている人間のためのもの,とはよく言ったものだ。