イリアス 第二十二歌

  • 「この期に及んでなお惚けもせず気も確かなこの不幸なわしを憐れと思ってくれ」はヘクトルの父プリアモスの言。現代でも同じような感覚を持つことがある。私の祖父も死ぬまで惚けなかった。医者がガンを隠していたが,病室に起き忘れたカルテを祖父が勝手に見てしまい,医者の方が気の毒なほど慌てていた。祖父自身は医者ではなかったが医学的な知識は持っていたため(他の医療関係の職についていた)そうやって盗み見たカルテや,点滴の袋に書いてある薬の名前から,死ぬまで正確に自分の病状を把握していたらしい。どうも,慌てる医者を見て面白がっていたきらいがあったが,身体が利かなくなったことや,病状のことは,惚けてしまって理解できなくなっていた方が幸せだったのではないかという疑問は,当時ずっとうちの家族について回った。
  • ヘクトルはやっぱりイリアスの主な登場人物の中で人格者といえるほうではないのかな。自分が判断を誤ったことを素直に認めているし。判断を誤った原因を神にも求めていないし。自分の判断についての責任を取るとはこういうことだろう。
  • なくなった人を弔う催しには戦車レースをやるらしい。どういう意味があるのだろう。
  • アキレウスは勇猛というよりも野蛮というか,やっていることが激しいを通り越してあさましい。いくらもっとも大切な戦友を倒した相手だからって,戦争とはそういうものでしょう。相手にだって同じ状況はヤマほどあるんだから。遺体に侮辱を加えることが目的になってるのはいただけない。
  • 死んだヘクトルの脚の腱に穴をあけて紐で戦車に結び付けて引きずったりしてるが,そんなコトするから自分だって足の腱に受けた傷が致命傷になったりするんじゃないの???←アキレウス